登場人物:真崎
フリーライター。
26 歳女性。2016 年 6 月に東京から沖縄へ移住。
6 月、炎天下の那覇市内。
夢と希望と捨てきれなかった物と物と物を詰めこんだ重さ14 kg のキャリーケースをゴロゴロ引きずりながら、暑さで瀕死の私は「北谷」へと向かう路線バスを探していた。
困ったことに、各バス停の案内表を見てもどのバスが北谷方面に行ってくれるのか全然分からない。住み慣れた東京を離れてやってきた新しい土地でさっそく迷子の26 歳。
仕方なく適当なバス停に向かい、到着したバスの乗車口から運転手さんに声をかけてみた。
「これはちゃたん行かんよー。○番のバスに乗ってねー」
沖縄の地名、読み方ムズない?
無事に北谷町(ちゃたんちょう)の宿に着いたその日の夜、沖縄に住む友達にその日の出来事をメールで話した。
「北谷を"きたたに”って読んでしまってめっちゃ恥ずかしかってんけどさ。いや、でも無理ちゃう? 北谷を”ちゃたん”て読むとか斬新すぎちゃう? 漢検準 1 級レベルちゃう?」
「沖縄の地名は、県外の漢字の読み方とぜんぜん違うからなー。じゃあ、”読谷村”はなんて読むと思う?」
突然のクイズ。
「どくたにむらぁ!」と毒々しさ全開で答えたい気持ちをギリギリ抑える。北谷の読み方が”ちゃたん”ということは、きっと沖縄では「谷=たん」なのだろう。この勝負はもらった。
予想の2歩先。
そして、クイズは続く。
「でも豊見城小学校は”とみしろしょうがっこう”です」
「でも豊見城中学校は”とみぐすくちゅうがっこう”です」
なんでこんなに地名の読み方難しいの?
これが、東京から沖縄に移住した初日にぶつかった
「沖縄の地名、読み方ムズない?」問題である。
谷を”たん”と読むなんて習ったことがない。読み方が「難しい」というか「特殊」と言ったほうが正しいかもしれない。大阪で生まれ、京都、横浜、東京に住み、日本各地を旅行したことはあるけど、これほど特殊な地名にたくさん出会った場所はなかった。
なんで、沖縄の地名はこんなに特殊な読み方なんだろう。
気になったので、沖縄で知り合った方に理由を聞いてみた。
その結果分かったのは
・琉球王朝時代、沖縄では一般的にひらがなが使われていた
・1609年、薩摩藩の島津氏に侵入された
・薩摩藩の支配に伴い、検地帳などの公文書を漢字表記することになった
・琉球語の音に合う漢字をそのまま当てはめた
ということ。
「要は、琉球語への当て字ってことです」と分かりやすく説明してくれた親切な男性、名前は瑞慶覧さん。
瑞慶覧さん:「沖縄県民の名字は沖縄の地名が多いんですよ。僕の名前も地名です。読み方分かりますか?」
真崎:「えっと、えー、”みずけいらん”さんですか?」
瑞慶覧さん:「惜しい!”ずけらん”です」
真崎:「わあ」
そんな私も、移住して3 か月が経つと特殊な地名にもだいぶ慣れてきた。
「あぁ、
大謝名(おおじゃな)のスタバはよく行きますよ」
「
我如古(がねこ)辺りは車でよく通りますね」
「
胡屋(ごや)に穴場なレストランがあってですね」
「今度、
今帰仁村(なきじんそん)に遊びに行くんですよ」
おそらく無意識のどや顔(「私、この地名ヨユーで読めますから!」の顔)でこんなことを話している気がする。
それでもまだ「南風見(はいみ)」「山入端(やまのは)」「仲村渠(なかんだかり)」「饒平名(よへな)」などの難問地名が沖縄にはゴロゴロあるので、引き続き油断はできない。
この記事を書いた人
ライター 真崎|ブログ:「真崎ですよ」
フリーライターの真崎です。
真面目な取材記事からゆるめのコラム、旅エッセイまでわりといろいろ書きます。
2016 年 6 月から沖縄の宜野湾市に住んでいます。
得意な沖縄料理はゴーヤチャンプル、それ以外は作れません。
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